季節柄、ワキにボトックスをされる方が増えて来ました。
ワキの汗染みとか、いい服を着た時に、気になりますよね。
ワキにボトックスを注射すると、注射したところの汗はほとんど止まってしまって、出なくなります。
ボトックスの効果は、一般的に3~6ヶ月くらいと言われており、うまくいけば、1年に1回夏ちょっと前にボトックスを注射すると、快適に過ごすことができます。
冬でも、シルクのブラウスを着たり、カシミアのセーターやノースリーブを着る方は、年に2回、あるいは、2年に3回くらいのペースでされたりと、人それぞれです。
ただ、効くのは、エクリン腺と言って、サラサラの汗を出すほうだけになります。
エクリン腺にも、ミネラル(塩分とか)や老廃物(いろんなものの代謝したカスみたいなものです)も混じってきます。
その時の体調や、食べたもの・飲んだものなどで、汗の中に混じってくるものも、多少変わってくると思います。
エクリン腺から出る汗自体には、ほとんどニオイはありません。
ただ、出た汗が皮膚や服について、空気にさらされて、(主に老廃物が)酸化したり、バイキンがついたりして、その結果ニオイを出してきます。(いわゆる汗くさい、というヤツです)
服についてしまったら、着替えない限り、ずっと服からは、ニオイがしますけどね。
ワキボトックスをすると、服に汗がほとんどつかなくなるので、その分のニオイを抑えてくれる、というのはあります。
それに対して、「わきが」というのは、アポクリン腺という、全く別の汗の腺から出る汗です。
これには、ボトックスは効きません。だから、「わきが」治療には、なりません。
あやしい美容外科の広告で、ボトックスがわきがに効くみたいな感じで、宣伝されているのは、全くのデタラメですので、どうぞご注意ください。
「わきが」の治療は、やっぱり手術になります。保険も効きますが、手術跡(キズアト)の大きさが違いますから、自費治療も含めて、いろんなクリニックで、カウンセを受けて、相性のいい先生にしてもらうのが一番です。(必ず形成外科の先生にね。それでも、リスクは、ゼロではありませんから)
うちに来られたワキボトックス希望の患者さんには、エクリン腺・アポクリン腺の話をして、まずボトックスの目的を必ず確認します。
「汗を抑える、多汗を抑える、ということで、大丈夫ですね?」ということです。
すると、3割くらいの方が、ちょっと悩まれてから告白されるんですが、「わきがかも。。。」と。
「わきが」の方というのは、狭いカウンセ室ですから、入ってこられた瞬間にわかります。すぐに、ニオイがしてきますから。汗臭いニオイではなく、「わきが」のニオイです。全然違います。
すかさず、「わきがじゃないですよ」とお伝えするんですが(ニオイがしませんから)、「今日は、制汗剤をたくさんしてきたから」とか「今日は、まだ汗かいていないから」とおっしゃいます。
ですが!「わきが」というのは、そんなレベルではないんですね~。「わきが」でも軽めの方(それでも、「わきが」というのかは、疑問です。誰でも、多少はアポクリン腺があるので)なら、そういうこともあるかおしれませんが、本物の「わきが」をご存知ないんだと思います。(ということは、「わきが」ではありません。)
ご両親のうち、どちらかが「わきが」の場合、子供が「わきが」という場合が多いので、「ご両親のどちらか、わきがですか?」と必ずお聞きします。(「わきが」じゃない、と言っても、自分は、「わきがだ」と主張されるので)
すると、ほとんどの方が、「聞いていないので、わかりません」と言われます。
一緒に暮らしていて、「わきが」に気づかないはずがないので、わざわざ聞くことではありません。「聞いていないから、わからない」ということは、「わきが」ではない、ということです。
さらに、汗のニオイを嗅がせてもらって、診断しますが、もちろん何もニオイはしません。(「わきが」じゃないから)
時々、汗の酸化したニオイや、バイキンがついたりして出たニオイがする方がいます。汗の多い方ですね。これはワキボトックスで、ほとんど改善すると思います。
皆さん、誰にも相談できずに、ずっと思い込んで悩んでおられた方が大半です。気にし過ぎ、なんですが、一度、そうかも、と思ってしまって、そのままずっと来てしまったパターンです。
悩むくらいなら、皮膚科で相談するのが一番ですよ。
(ワキガ専門と謳ってる美容外科に行っては、いけませんよ!「わきが」じゃないのに、「あなたはひどいわきがだ!」と言って、法外な治療費を請求して手術されますから!今すぐ、手術しないと、トンデモナイ!みたいに、かなり煽られるそうです。絶対ダメですよ~!)
保険でも、「塩化アルミニウム液」を処方してくれる病院もあります(うちは、おいてませんが。多汗とわきがで、保険が効きます)。
まあ、これも、効果に個人差があったり、、かゆくなったり、かぶれたり、と使いやすい薬ではありませんが、ワキには、一度使ってみる価値、あるかな。。。?
「わきが」は、独特のニオイで、焦げたような、ちょっと言葉では表現できません。時々、買い物中や電車の中で、ニオイがして、ああ、どこかに「わきが」の人がいるんだな、と思います。
海外では、当たり前なんですけどね。
ボトックス相談の方で、ごくまれに、「わきが」の方がいらっしゃいます。根本的な治療ではありませんが、ボトックスの話と、わきが治療の手術(うちでは、してませんが)の簡単な話をして、形成外科の受診を勧めますが、みなさん、ワキボトックスをされることが多いです。
とりあえず、汗(エクリン腺の)の量を抑えて、汗くさいニオイの分は抑えて、そのうえで、制汗剤を使う、という二段構えです。
わきがの手術も、リスクがいろいろありますから、誰でも怖いですよね。
手術しなくても済むなら、誰だってしたくないです。
ボトックスをすることで、アポクリン腺から出た汗を、エクリン腺の汗で流されて広げられることはなくなるので、制汗剤も使いやすくはなると思います。
制汗剤も、市販のモノよりは、クリニック専用のモノのほうが、かなり抑えてくれるので、どうしても気になる、という方は、当院でも2種類そろえています。スティックのロールオンタイプとクリームタイプです。
市販のモノよりはお値段ちょっと高いですが、クリームタイプのモノは、わきがに対して、効果が実証されたものなので、本当におススメです。
そういうことをしても、やっぱりダメなら、手術も考えます、という方も多いです。人それぞれですね。