先日の美容皮膚科学会で、一般の学会会員は、ポスターによる学会発表というのができるんですが、これは学会によって、口演になる場合もあれば、ポスターのみ(一般会員は)という時もあります。
美容皮膚科学会だけあって、皮膚科学会や形成外科学会よりも、ほとんどすべての演題が美容に関係することですが、あまりあやしい内容だと、さすがに受理もしてくれないかと思うんですが、この評価基準は、その時の審査員の方によって、様々だと思います。
いろんな学会にも、発表内容のランクがあって、皮膚科学会や形成外科学会は、総会という一番大きな年1回の学会と、地方会と言って、その地区だけの定期的にする小さな学会があります。
地方会は、新人の先生の学会デビューみたいな、慣らし台みたいなところがあって、しょーもない(失礼)、1例報告とかでも、全然ありです。1例報告でも、ちゃんと考察ができていないと、発表後の質疑応答で、恐い先生方から、するどい質問を浴びせられ、タジタジになってしまうというお約束です。
形成外科学会は、手術がメインですから、○○例やって、統計を取ったら、こういうことがわかった、とか、新しい手術方法とか、こんな腫瘍や症例に、こう対処した、とかそういう内容のことが多いです。
レーザーのセクションもありますが、うまくいった症例写真をたくさん見せたり、新しい照射方法を提案したり、統計を取って、結果の評価をしたり、という内容になることが多いんですが、皮膚科学会になると、ほとんどの発表で、病理組織の検討というのがなされていないと、ものすごく突っ込まれます。
(病理組織というのは、患者さんから、皮膚なり腫瘍なり、その一部を切り取って、顕微鏡で、どんな細胞がいるのか、どういう状況になっているのか、細胞レベルで調べる検査です。こうすることによって、推測ではなく、確実に、何が起こっているのかがわかります。病名がわからなかった疾患でも、確定診断をつけることができます。さらに、細かく、電子顕微鏡まで使って調べることもあります。)
この病理検査、確かに素晴らしいんですが、例えば、腫瘍とか、診断のつかない謎の赤い斑点(しかも、全身状態に影響を及ぼすと考えられるような場合。膠原病とか、重症の薬疹とか、内臓に関わるかも、という場合です。)など、診断がつかないと、今後の治療が全く変わってきますから、必ずと言っていいほど、必要になります。
かなり前ですが、形成外科でレーザーをやっている者は知らない医師がいないくらい、有名な先生が、皮膚科学会の総会で、ランチョンセミナーかなにかで、口演されました。
発表内容は、レーザーをやっている者からしたら、素晴らしかったんですが、照射方法の検討や、良かった症例写真を出したりされていました。
そしたら、発表後の質問に、皮膚科のエライ先生が、「病理も取らずに、この発表はなんですか?美容外科ではあるまいし。これもよくなった、あれもよくなった、って、病理がなかったら、あやしいだけだ!」みたいに、ボロカスでした。
反対に、病理を取ったり、細胞学的なレベルで、データーを取っていたら、絶賛されたりするので、おかしな話です。
まあ、皮膚科の美容に全く興味のない医者からすると、美容医療というのは、あやしい美容外科と一諸にされて、全否定されることも、時々あります。
でも、健康な方が、目的は美容のみで訪れて、いきなり皮膚切り取ります、なんて言われたら、二度とその病院に行きませんよね?
キレイになろうと思って行っているのに、(切り取ったら、もちろんキズ跡は残ります。消えません。)何しに行っているのか、わかりません。
美容医療で、そうそう病理検査なんて、できないんですよ。
(皮膚科の先生でも、何でも病理を取れ、という先生がいて、そりゃそうかもしれないけど、それって、学会発表か自分の研究のためでは?みたいな時もあります。医局会とかミーティングみたいな時に、「次回、病理取っておいてね」とエライ先生が簡単に言われ、下っぱの先生は、「どうやって、患者さんに説明しよう。。。」と悩むわけです。特に、とりあえず始めた薬が良くなってきたりしてたら、なんで今更?となりますよね。)
美容医療でも、大学病院とかで行われる治験とか、、ボランティアの方でデーターを取る時に、いくつか病理を取られることがあります。
ただ、そのほとんどは関係者だったりして、一般の患者さん(というか、関係者でない方)ほ、すごく少ない気がします。
もちろん、治験などされる前に、全ての説明(副作用も含めて)はされますし、無料で処置は受けられるわけですが(ちゃんと安全性は、先に確認され、効果が見込めると思われるやり方で)、きちんと言われた日に診察に来ないとダメですし、病理検査までとなると、ホントにボランティアの方(と関係者)が、そんなに得するわけではないと思います。
(たまに、患者さんで、実験する時は、私を使ってください、と言われる方がいらっしゃいますが、モニターもそうですが、いいことばっかりではないと思います。何をどこまでするかでも、違うとは思いますけれど。)
どの科でも、総会で発表するということは、やっぱり大変です。
ただ、美容皮膚科学会は、まだそれほど大きな学会ではありませんし、総会と言っても、地方会がないので、ここしか発表の場はありませんし、演題も他の学会ほどたくさん集まるわけではないと思っているんです。よほど、あやしくない限り、受理されちゃうでしょうか。
(演題を応募する時は、抄録と言って、すごっく簡単なまとめみたいなのを書いて、提出します。まだ、その時は、データーが全部揃ってないし、結果が変わってくることも稀にあるので、そんなに大きなことを先に言いきってしまうと、帳尻が合わなくて、後で大変な目に遭います。ひどい時は、演題内容を変えないといけない時も出て来ます。この場合、当日、その場で、「演題内容を変えさせていただきます」と言うんですが。。。まあ、時々あることです。事情は、それぞれだと思います。もっといいことが見つかって、さらにパワーアップした内容になっていることもありますし、逆のパターンもあります。
だから、抄録には、データーが出ていない時は、どうとでもとりやすいニュアンスで、送ることもあります。)
美容皮膚科学会の発表の特徴は、企業がらみの発表が、他の科に比べて、とても多い印象です。
企業がらみと言っても、どこもそんなスゴイ結果が出ているわけではないので(薬や医療ではありませんから、当たり前ですが)、「ふ~ん」という内容なんですが、私の独断と偏見では、同じ内容を皮膚科学会に出したら、受理してもらえないと思います。
今までも企業の発表はあったんですが、今年は特に多かったですね~。
去年とかも、イオン発生器でしたっけ?それで角質の水分量が上がる、とか発表がありましたけど、そんなのさっさと乳液かクリームでも塗ったほうが、よほど保湿になるのでは?と思ったのを覚えてます。
受け取り方によっても、違いますが、まあ、その程度なんですね。
だから、今回、常盤薬品のコラーゲンドリンクで、結果が出たので、正直驚きました。これがホントなら、スゴイことです。(私は、飲みませんけどね。今、飲んでるサプリで、もう一杯一杯です。光やレーザーをあてるほうに専念します)
企業だけの発表って、たまにありますが、大した結果ではないのに、それをさもスゴイことのように最後が締めくくられていると、あまりにも見え見えなので、見てる医者も、「ふ~ん」程度で、すぐに忘れてしまいます。
ただ、企業と大学の共同研究みたいなのも増えましたね。研究費の関係もあるので、そういうことって、必要です。大学や大きな施設には、研究していただかないと。開業医では、そこまでのことって、できませんからね。
ただ、そういう発表には、ちゃんと企業から何を提供を受けているのか、関係がちゃんと表記されています。もちろん、企業名も。だから、見るほうも、「はは~ん」とわかりやすいんです。
素晴らしい発表だとしても、そういう意味では、企業と関係していると、「ホントかな~?」と疑ってしまうところが、ちょっと可哀想ですか。
でも、大抵の発表は、ツメが甘いというか、ツッコミどころ満載の発表で、よくそれだけで、この商品がいいと言い切るな~、という発表が多いです。
結果判定をするのが、一番重要なんですが、器械で測定となると、そうそうごまかしが利きません。
だから、「効果が出た」というには、器械が一番なんですが、大抵は、測定したら、全然効いていないので、「本人自己評価」や「アンケート」という形になります。
そりゃ本人が満足してたら、いいんでしょうが、学会発表として、プラセボ効果(信じていたら、効果が無くても、良い結果が出てしまうことです)を差し引いて、検討しないと、それこそ誇大広告と同じでしょう~。「個人の感想です」とテロップを流すのかって。あやしすぎる。。。
だから、見てる医者も、そんな発表はわかっているので、まさに、「ふ~ん」か、無視に近いと思います。
企業がらみの発表でも、ちゃんとした施設は副作用とかも全て評価して、最後に締めくくるわけです。
当たり前ですよね。いいことだけ言ってるって、おかしいですから。
長所と欠点(副作用も)を合わせて見た時に、じゃあ、わざわざ要らないかな~、ただでもらったら、あってもいいかな、でも使い方は注意しないと、って感じです。
全部の患者さんに使えるわけでもなく、やっていい患者さんを選ぶ処置だな、とか、これでなくても、もっといいの、あるやんって、ことが結局多いんですけどね。
ところがね~、今回えげつない発表がありました。ちょっとビックリで、思わずツッコミました。
ちゃんとした施設の名前で発表する以上、内容に責任を持ってほしいです。
無名の一開業医が「効く」と言ったところで、影響力って、それほどないですが(そいつ、誰やねん?ですよね)、有名な大きな施設の場合、広告に名前が入ったら、一般の方は信じちゃいますよね。
いや~、恐ろしい時代ですね。何を信じていいのか、ちょっとあまりのひどさにわからなくなりました。
それがわかっただけでも、下関まで行った甲斐があったというものです。
下の先生だけで、暴走した発表なのか、上の先生も容認したのかはわかりませんが、共同演者に名前があって、施設名をつけてたら、もう共犯です。
それだけ、企業側に有利丸出しの発表は、許せませんね~。
(発表には載せていない真実というのが、突っ込んだら出てくるわけです。それは、企業側に都合の悪いことなんです。だから、あえて載せないんですよね~。それって、その商品を買う消費者からしたら、「ウソをついている」のと同じだと思います。)
長くなるので、詳細は、次に書きますね。
広告で、何か効果のあることが書いてあったら、絶対突っ込んでお店の人に聞きましょう。
「○○認定済み」とか「効果が実証されました!」とか書いてあっても、突っ込んだら、全く関係ないことだったり、そこの商品とは、全然違うものだったりするので。
それに、ちゃんとした施設が加担するとは思いませんでしたが。。。