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  • 院長
    柴 亜伊子
  • 京都四条 あいこ皮フ科クリニック

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コロコロローラーの評価

少し前から、顔にコロコロ転がすローラー、流行ってますよね。

むか~しも流行ったのを、憶えてらっしゃいますか?

若い方はご存知ないと思いますが、「淡谷のり子のゲルマニウムローラー」!

歌手の淡谷のり子さんが、コマーシャルされていて、今みたいな金属ではなく、TVショッピングだったような気がするんですが、画面には、柄のところか、本体が大理石みたいにな見た目になっていて、ピンクとパープルから選べたような気がします。20年くらい前でしたっけ?

すぐに廃れたような気もするんですが。

医者になってすぐの時に、あれを顔中にやって、顔中茶色のしみだらけ(今から思えば、肝斑のすごくひどい状態ですね)の方が、「治してください」と来られて、上の先生がビタミンCの飲み薬だけ出したのを覚えています。

その時に、「ああいう人は、まず顔をいじるのをやめないと、同じことの繰り返しだから、治療しても同じやねん。」と言われてました。

まさに、その通りなんです。

TVだと、女優さん(誰でしたっけ?)が、顔の表面に力を入れずに、コロコロ転がしているだけですよね。

「なんかいいみたい~」とか、「これ、手放せません」とか「これのおかげで、なんとかかんとか。。」とおっしゃいますが、必ず下に「個人の感想です」とテロップが流れます。

商品のチラシにも、TVコマーシャルにも、どこにも「効果・効能」は書いてありません。

「効能・効果」の表示がない、ということは、「効かない」ということです。

だって、薬だったら、薬局で買う市販薬であっても、「効果・効能」書いてありますよね。

どんなに店員さんが、スゴイ効果を言ったとしても、表示がなければ、そこのメーカーが約束しているものではありません。

ただの店員さんの、詐欺まがいの販売手口です。

(当たり前です。効果が実証されてもいないのに、そんなの表示に載せたら、本当の詐欺になります。医師法違反にもあたり、逮捕されてしまいます。だから、メーカーは、どこも似たような、コマーシャルになるんです。効果を言わずに、でも、買ってくれないと困りますから、イメージだけで、消費者を引き付けるという感じです。煽るだけ、煽るわけです。

賢い消費者は、乗っかってはいけません。)

まあ、こんなの昔から似たようなものはあるわけで、忘れた頃に、また業者は、少し形を変えて、売りだす、という作戦でしょうか。。

昔も(今も?)、「幸せを呼ぶペンダント」とか、「財運をもたらす財布」とか、「アトピーが治るクリーム」とか「体臭を消すサプリ」とか、あやしいもので、世の中溢れています。今でも、雑誌や週刊誌の後ろとかに載ってますかね?

信じる方が悪い、という意見もありますが、人間思い悩んでくると、藁をもつかみたくなり、心に隙ができます。

あちらは、売ることにかけてはプロですから、うま~く人の心理を読んで、これでもか!これでもか!とキャッチコピーをかぶせて来ます。

私も夜中、たまたまショップチャンネルを見てると、おもわず欲しいな~、と思ってしまうような宣伝文句があったりします。そういうのを見てると、これは一般の方は、買っちゃうだろうな、と思います。

さて、いろんなコロコロローラーが出ていますが、それほど大差はないんでしょうか。というよりも、おかしくなることはあっても、なにかそんなに良くなるものではないと私は思ってます。

また、買った方は、良くなると思ってされるわけですから、TVを見ながらとか、ひどい方で、何時間もされるわけです。また、CMでは力を入れてないのに、「上がれ~、上がれ~」と念じながら、一生懸命される方が多く、みなさん力み過ぎて、ぐいぐい押すんですよね。結局、あの棒で、ゴシゴシ擦って、摩擦を起こしていることになり、私は、それも肝斑の原因になっていると思ってます。

うちに来る肝斑の患者さんで、コロコロローラーも含めて、流行りの美顔器・マッサージをされてる方が多く、そういうことを始めてからひどくなった方が圧倒的に多いです。

私は、肝斑を良くしたいなら、それら全部、今日から止めてください、とお話してます。

先日の学会で、このローラーの有効性と安全性の評価の発表がありました。

もちろん、その企業から研究費・協賛金を受けておられます。

まあ、そんなことはよくあることで、正しくきちんと結果について評価をすればいい話で、実証しても何もいいことが無かった場合(医療機器ではないので、あり得ます)は、話の持って行き方や発想の転換とかでごまかすしかありません。(企業側は満足しないかもしれませんが、仕方ありません。)

今回、50~60代の女性20人くらい(24人だったか?抄録は15人でしたが、最後に増えることはあります)に、このローラーを1回10分だか15分だかを、1日3回してもらって、測定されてます。

最初の1か月は、顔の右だけ、次の1か月は、左だけ、最後の1か月は両側、と計3か月されてます。

(なんで、こんなことをされるのかは、よくわかりません。普通は、同じ方で、どちらかだけやって、反対側は何もなしで比べて、評価をしないと、本当の効果が判定しにくいと思います。わざと、判定をごまかすためにされているというなら、わかりますが。。)

で、結果なんですが、コロコロをやって、60分まで血行が良くなったそうです。

そういう写真が出ていました。

角質層で、水分含有量が増えていて、血行が良くなったことによるのでは、と推測されていました。

ただ、いろいろな機器で科学的に分析されましたが、施行前と変化はなかったそうです。

これくらいなら、まあ、よくある話で、学会発表でもよく見かけます。

ところが、それに続けて、シワの改善が言われていて、「有効例」というので、お一人の写真が出ていました。確かに、少しシワが減っているのが、写真で確認できました。

(ただ、有効例が何人だったのか、割合が表記されていないんです。)

そして、ビフォーとアフターの写真があり、その施設の皮膚科医5人中3人以上が、「改善した」と判定した、と書いてありました。

(数名の方の写真が載っているんですが、(恐らく有効例)、どっちがビフォーか全然わかりません。

普通、判定基準も、「悪化」「やや悪化」「変化なし」「やや改善」「改善」と5段階評価で判定されることが多いんですが、表記がないんですよね~)

最後に、ご本人評価のアンケートがあり、ほとんどの方が、満足しているみたいな評価でした。スゴイ方で、リフトアップした、と言っている方もいらっしゃったそうです。

結語として、副作用もなく、安全性が確認され、また、リフトアップ効果やシワの改善を認める、うんぬん、と書いてありました。

(誰が、リフトアップした、と判定してん?と普通なります。ご本人が言ってるだけですから。そういうのは、プラセボ効果と言って、正しい評価ではありません。

そりゃ、ご本人が満足されてるなら、いいんでしょうが、お金を出して買う方は、本当の効果があるのかないのかを知りたいわけで、それを医師として、検証している、発表ではなかったんでしょうか。。)

「副作用は全くないんですか?」という質問がされ、演者の先生(医師だと思うんですが、違いますかね?)は、「長時間やったら、私も顔を赤くなりました。時間を守らないといけません」と。(!!)

(副作用なく、安全性を確認した、ってポスターに書いてあるやん?!なんじゃ、そりゃ!!)

あまりにも、結果考察が誘導しすぎてるので、おかしいと思い、聞いてみました。

シワが改善した、と写真を載せている有効例の割合と、皮膚科医が判定した写真のビフォーアフターの違いがわからないのに、なんで半数以上の医師が「改善した」と判定しているのか、と。

シワの有効例は、このたった1例だけだそうです。

他は、変化なし、と中には悪化した方がいたそうです。

(なんでそれで、シワの改善に役立つ、と結語で言われるのか、わかりません。同じ割合、いえそれ以上で、悪化してる方がいるかもしれないのに、意味わかりません)

皮膚科医が判定した写真は、2枚見せて、どっちがアフターか当ててもらったそうです(確率は2分の1ですね)。もやは、当てモノですか。。。なんでそれが、医師の言うところの、「改善」になるのか。。。ここは、TVのやらせ番組か、と思ってしまいました。

よくこれだけ、都合の悪い結果を隠しておいて、「副作用なく安全で、効果がある」みたいなことを発表するな~、とビックリです。医師メインの学会で、ちょっと信じられませんね。

そんな大した結果が出ると思ってされていたわけではないと思うんですが、角質の水分量が上昇して、血行が良くなった、というのがホントであれば、(それすらも、何か作為的に結果を誘導されているのかも、と疑いたくなります。何を信じていいのか、わかりません)、それだけでいいと思うんですよ。何も出ないよりは、マシです。

長時間やると、副作用の出現が懸念されるから、注意喚起が必要、というのも表記しないとダメですし、他の大した効果は認められなかったが、本人満足度が極めて高いため、今後も検討を続けていく、とか、こういうのって、〆の言葉って、大体決まっているんですよね。

スポンサーがいるわけなので、あまりひどいことも言えないし、でも、医師として、おかしなことも言えないし、ぼかして逃げるって、言うんでしょうか。それであれば、「ふ~ん」っていう発表で終わっていたものを。(まあ、スポンサーは、それでは困るんでしょうけどね。)

ちょっと、この発表した施設を信用できなくなりましたね。ちゃんとしたところだと思っていたので。

 もし、これで、企業側が、「皮膚科医お墨付き!」とか、「効果を皮膚科医が実証!」とか商品に表示したら、一体どうするつもりなんでしょうか。

(企業は、それこそが欲しいんでしょうが。)

もう、ホントに信じられない時代に突入しちゃったんですね。。。

この発表を聴いて、ますます、うちの患者さんには、止めておいてもらおうと決心を固めてしまいました。

いや~、学会に参加した価値がありましたね。

(明日から、夏休みをただきます。休むのは、火曜日だけですが、水曜日は元々休診日なので、22日木曜日から、診療を始めます。

ご迷惑をおかけしますが、リフレッシュしてきますね!)

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