TVドラマの「DOCTORS 最強の名医」、ご覧になっていらっしゃいますか?
実は、私も1回目は見ていなくて、たまたま2回目の途中から見て、あまりに、沢村一樹さんのドクターがカッコよすぎたのと、話の内容がおもしろかったので、途中からでしたが、はまってしまいました。
医者を題材にしたドラマは数多くあり、医療現場の実際にかなり近いモノもあれば、ヒーローマンガのような、こんなことできる医者、世界中探してもいないし、みたいなドラマまでピンキリです。
番組のタイトルからして、非現実的なヒーローマンガ系かと思ってました。
沢村一樹さんは、やっぱり演技がとてもお上手ですね~。おもわず引きこまれます。
あの笑顔!たまりません。。。あの笑顔でお願いされてしまうと、何でも無理聞いちゃいますね。以前、バラエティで、エロ王子とかでしゃべっていらっしゃったイメージも強かったので、おちゃめな印象もありましたが、ドラマ中は、ホントに引き込まれてしまいました。
また、高嶋政伸さんが、子供っぽい自分が一番でないと気がすまないイヤな医者の役を演じられていますが、あの方も演技がうまいので、これまた天下一品ですね。むちゃくちゃイヤなヤツ全開です。
高嶋政伸さんの叔母役で、病院の院長を、野際陽子さんがされており、結構な演技派を固めたしっかりしたドラマになっています。
内容も、沢村さん演じるどんな手術でもこなす外科医というのは、かなり無理はありますが、ドラマの中心になっているのが、沢村さんが腐った病院を、患者さんのためになる病院にするために、戦うのではなく、さりげな~く根回しをしつつ、うまく病院改革をしていく、という夢のような話です。
でも、その根回しや人をうまく動かしていく様が、ほほ~、ととても見ていて面白いです。
今の医療は、医療訴訟が以前よりも格段に増えているので、今まで医者の善意で「してあげていた」と医者側が認識していたことが、患者さんから訴えられたりしているので、善意を昔みたいにバンバン使う医師というのは、かなり減っています。
「医者の善意」というのは、一般の方からしたら、わかりにくいと思いますが、ほとんどの勤務医は、残業手当も休日出勤もほとんどついていません。休みの日や夜遅くまで残って、患者さんの容態を診ているのも、ほとんど無償の行為なわけです。
夜間当直を一晩して働いても、翌日は、普通に朝から勤務です。一晩寝ていなくても、です。
それじゃあ、基本給が高いのかと言われれば、一部高い病院もありますが、ほとんどの病院は、患者さんが思っていらっしゃるほどの高い給料はもらえず、多分時給にしたら、マクドナルド以下です。(以前、大学にいた時、後輩が計算して、悲しくなってました。計算したら、ダメですよね。。)患者さんの体のことを思って、本当のいい医療をする医師が、高い給料をもらえるわけではありません。
それだけ、自分の時間を犠牲にして、患者さんを診るのも、みんな「医者はそういうもの」という使命感があればこそで、自己犠牲の世界なんです。患者さんの病気が良くなって、喜んでいただいた笑顔であったり、言葉であったり、そういうのが報酬代わりというか、それで今までの医者は、勤務医を続けてきたわけです。
もちろん、患者さんは、医者は何でも診てくれる、と思っておられる節がありますから、内科に行って、湿疹や腰痛(整形外科領域の)・目のアレルギーとかも一緒に診て、薬が欲しいと言って来られます。
それは、自分の専門外で、、それぞれの専門の医師にみてもらわないと、場合により正しい薬が出せるかどうかもわからず困ってしまうわけですが、患者さんも、わざわざ別のクリニックを探して、また待ち時間があって、大変だろうな~、と「これでダメなら、ちゃんと専門に行ってくださいね。」と、とりあえず処方されることがあります。自分は、あまり処方したくなくても。患者さんに説明したところで、他に受診する時間がないとか、いろいろ言われて、ここで出してほしい、と言われるわけなので。こういうのも、「善意」と言えば、「善意」なわけです。処方した以上、それは全て処方した医師の全責任となるのは、わかっていて出すわけです。
ところが、最近は、こういう「善意」でした行為について、「治らない」と訴えられたり(治らなければ、ちゃんと受診するように言っているにも関わらず)、休日や夜間の、「どうしてもとりあえずの薬だけほしい」と言われて、(専門外であっても)簡単に診察だけして、薬だけ出して、その後何かがあった場合に、訴えられたりしているわけです。
(ちなみに、休日や夜間の時間外は、ほとんどの病院がロクな検査ができません。また、スタッフの数も全然少ないため、時間内と同じ医療の提供は、不可能と言っていいでしょう。
最近は、休日や夜間に、わざと受診する患者さんも増えていて、「空いてるから」とか「待たずに済むから」とか、「仕事をしていた」「晩御飯食べて、お風呂に入って、今なら手が空いたから」とか、コンビニ感覚で、受診されて、とりあえず薬をほしい、という方が実際大勢いらっしゃいます。(ドラッグストア代わりですね。)
そういう方々が、夜間・時間外のかなりの割合を占めるため、本当の重症な方が、なかなか診てもらえない、ものすごく待たされている間に悪化する、ひどい場合は、いっぱいだからと断れる、ということが多々あり、以前より、深刻な問題になっています。
タクシー代わりに、救急車を使われる方もいらっしゃいますから、重症の方を運べないこともあります。一部の患者さん側のモラルが落ちていると、かなり問題になっています。
また、診察して、これは専門外となれば、緊急を要する場合、どこか受け入れてくれる病院を即刻探さないといけないわけですが、そんな時間外に受け入れてくれる病院というのは限られています。また、その病院のベッドが空いていないと、医師などの時間が空いていても、入院させるベッドがないので、受け入れ(診察も)を断られます。探しても見つからない場合、見つかるまで、自分が診ないといけないわけですが、専門外ですから、対処できません。もし、その間に、急変されれば、命を落とされる可能性も出て来ます。そういう場合でも、ご遺族が訴えられることが、事例としてあります。)
給料がもらえるわけでもなく、無償で患者さんのために、と思ってやったことが、ちょっとした行き違いや治らないという理由で、(全ての病気が治るわけではありません)、誤診だと訴えられる時代になってしまったので、「善意」を使う医師も、減ってきたと思います。
だって、やればやるほど、訴えられるリスクをしょい込むわけですから。
だから、今の時代、時間外や自分の専門以外に、手を出す医師は、かなり減りました。そんなことしたら、訴訟のリスク一気に増えますからね。
当直明けのしんどくて、眠たい時に、時間外の患者さんは、判断力が鈍ってる可能性もありますから、無理して診ようと思わない医師もいるでしょう。だって、自分の勤務時間、終わってますからね。それで、残業代が仮に出たとしても、お金もよりも、とにかく一刻も早く眠りたいわけです。
それだったら、その時間に空いている病院を探してもらって、そこに行ってください、となるわけです。「善意」で診て、もし誤診したら、訴えられます。そして、勤務医は、しんどいことが多すぎますから(うつ病も増えているそうです)、みんなどんどん止めていくわけです。ますます、救急・時間外をみてくる医者と病院が減って行くわけです。医療崩壊ですね。)
命に関わらないことなら、まだ取り返しがつきますが、医療の恐いところは、命に本当に関わってくることがあるので、特に、大きな手術だと、リスクはなるべく避ける傾向にあります。
このドラマの中で、消化器外科専門の医師が、卵巣などの婦人科疾患やそれ以外を扱う、というのは、普通はないと思います。もしされていたら、ホントに、無謀です。
まして、大きな手術を、麻酔科医のいない病院でやるなんて、今の医療では、なかなかないと思います。
(ドラマではされてるようですが、そこは目をつぶって。。。麻酔科医というのは、術中の患者さんの全身状態を管理するドクターです。血圧から尿・呼吸・心臓・体温など全て管理されます。外科医が手術をやりながら、全身管理もするというのは、見逃しが出てきて、そのため死亡することもありますから、麻酔科医が必要なわけです。でも、麻酔科医の人数が少ないため、また麻酔科に支払うお金もこともありますから、麻酔科を確保していていない・できない病院も、まだまだあります。)
もし卵巣などにまで病巣がいっていると予想されるのであれば、最初から婦人科のある大きな病院で手術しないとダメですし、術前にそこまでディスカッションする必要がありますし、予想外の範囲まで、病巣が広がっていたなら、出来るところまで手術をして、一旦おなかを閉じて、後日手術を追加することも、あります。
そりゃ、患者さんの体のことを思えば、1回で手術は済むほうがいいし、再手術というのは、癒着といって、すごくやりにくくなりますから、しないにこしたことはないです。
でも、専門外の臓器の摘出が、正しくできないのであれば、絶対触ってはいけないですよね。
(ドラマの中では、沢村さん・高嶋さんどちらも、その知識と技術があったので、されていましたが、普通はないでしょう。)
ドラマの中で、高嶋さん率いる外科のドクター達が、かなりイヤな医者という設定にはなっています。観ておられる方も、なんでひどい医者だ!と思われるかもしれません。
でもね、今の医療の現場の中では、当たり前と言えば当たり前で、こういう医者は、実際大勢います。みんな自分で責任の取れない、範囲外のことは、タッチしません。
(勤務時間中に、株をやっているのは、むろん論外ですが。)
むしろ、沢村さんの役の医者のほうが、まさに異端児で、今の時代に珍しい医者です。(まあ、こんな医者、いないでしょうけどね。)
ナースが、「絶対大丈夫ですよ」とは言っていいと思いますが、医者が言うと、言葉の重みが変わってきますから、医者で、そうそう「絶対大丈夫ですよ」なんて、軽々しく言いません。
まして、手術ならなおのことです。「絶対」なんて、あり得ませんからね。
でも、患者さんは、安心したいから、「絶対」を欲しがります。
安心させたいだけのための、お守り代わりでいいなら、いくらでも言えますが、言われた患者さんは、その言葉にすがってしまわれるので、ダメだったときのショックの大きさを考えると、担当医は、まあ、言わないでしょう。
沢村さんのように、あれだけ自信を持って、患者さんに、「大丈夫」と言えれば、どれだけいいでしょうね~。
(時々、「絶対治る」とかいう医者がいます。一部の患者さんから、新興宗教の教祖なみに、熱狂的に慕われ、評判になります。でも、「絶対」なんて、あり得ないので、もちろん治らない患者さんが出て来ます。当たり前ですよね。あるいは、ステロイドのホルモン剤(しかもむちゃくちゃ強いやつ)をバンバン使っているだけ、ということもあるので、処方される薬にも注意が必要です。そのうち、副作用が出てきて、大変なことになりますから。)
言葉の魔力で、プラセボ効果と言って、大切なんですが、これだけ訴訟が多いと、普通の医者は、あまり使いませんね。。
普通ではいないような医者が、患者さんのために、病院改革とスタッフ教育をしていく、このドラマは、結構観ていて、終わった後、私は、少し幸せな気持ちになって、元気をもらいます。なにより、沢村さんが男前ですしね。
もし、よろしければ、皆さんも一度ご覧になってください。毎週木曜日、午後9時から、朝日放送です。