世間には、たくさんの美容外科・美容皮膚科などの美容クリニックがあふれています。
ちゃんと説明もして、診てくれる良心的なところ(当たり前の話ですが)から、お金さえふんだくったら、後はどうでもいい、という悪質なところまで、ピンキリです。
良心的に診てくれるから、値段も良心的かというと、そこはまた別問題で、ちゃんと、一人の患者さんに時間を取って診る、となると、それ相応の金額でないと、おかしいことになってきます。
(でないと、そこは、どうやって採算が合ってるの?となります。ボランティアでされているとか、趣味でやっている、というクリニックならいざ知らず。)
良心的な価格(いわゆる格安)の美容クリニックというのは、まあ、普通、ダメなことが多くて、単純に考えて、そこは薄利多売のクリニックですから、一人の患者さんに、時間を割いている暇はありません。流れ作業のベルトコンベアのように、どんどん流していかないと、これまた採算が合わないわけです。
うちに来られる患者さんの大半は、格安美容クリニックは、恐い、と言って、関わらない方がほとんどです。
でも、ごくたまに、格安クリニックの実態を知らずに行ってしまい、治療も受けてしまい、説明も副作用の話もなく、エライことになって、どうにかなりませんか?と来られる方がいらっしゃいます。
患者さんからのお話を聞くと、やはりそこのクリニックはおかしいな~、と思ってしまう話ばかりで、社会勉強をしたと思って、もう近寄らないほうがいいですよ、それだけで済んで良かったかも、みたいな話をします。
格安の値段で宣伝されているものは、美容外科でもエステでもそうですが、そんなうまい話はあるわけがなく、「エサ」でしかないので、おびき寄せて、もっとお金を巻き上げられて、ひどい時には、時間とお金だけでなく、自分の体や肌もエライ目に合う、という、お決まりのパターンです。
何事もなく、むしろ満足して帰って来られたなら、それは宝くじに当たるような、ラッキーなことで、ホントに良かったですね。でも、毎回そうラッキーばかり、とは限りませんから、お気をつけください。
さて、今回は、格安美容外科で、被害に遭われた患者さんの話を聞いていて、こんな方がいっぱいおられるうような気がしたので、注意喚起です。
その方は、ワキの汗が気になって、そこに受診されました。
普通、ワキのボトックス注射で、汗を押さえる治療を勧められるはずです。
そしたら、「ニオイ気になる?」と聞かれ、誰でも、汗をたくさんかいて、気になる時って、ありますよね?だから、「時々」と答えたそうです。
そしたら、「ワキガだから、手術しないと治らない」と言われ、(ワキガの診察はなしですよ。)いきなり手術の予約をさせられたそうです。(もちろん、手術代金のほうが高いわけです)
初めてのことだったので、そういうものなのかな、でも、手術で治るし、というので、予約をされました。
手術当日は、説明した医師とは違う医師で、手術のキズも、説明とは違うところから切られて、しかも結果、汗が全然止まらない。。。悪徳美容外科に、よくある話ですが。。
(ちなみに、ワキ汗を抑えるのは、手術よりも、ボトックスのほうが効果的です。ワキガはボトックスではなく、手術が基本です。)
しかも、キズ跡は、すぐに消える、ようなことを説明され、(消えるわけありませんが)、電話しても、時間がたてば消えますから、と一方的に言われて、取り合ってくれない。
キズ跡相談で、うちに来られました。
まだ、手術が終わって、1か月くらいでしたっけ。
手術のキズ跡は、通常、最初は赤くて、白っぽく肌色になってくるのに、早くても3カ月、普通6か月くらいかかります。遅い方だと、1年くらいかかることもあります。
もちろん、そんな説明は受けていらっしゃいません。
だから、余計にビックリして、来られたわけです。ここまでも、よくある話です。
時期からいっても、まだ赤くても当たり前なんですが、時間が経つのを待つしかありませんが、どうしても早く赤みなどを引かせたい、と言う場合に、ただ何もせずに待つのは耐えられない、と言う方に、光・レーザー治療を追加することが、私はあります。
もちろん、光をあてたからと言って、すぐに消えるわけでなく、置いておくよりも早い、というレベルです。
よく使うのが、ジェネシスですが、これは、術後の炎症や赤みを抑えてくれる効果があるので、使いますが、もちろん、お金がいるわけで、お金がかかっても、少しでも早くなんとか、というなら、そういう治療を足す、というのは、アリだと思います。
その方は、少しでも早く目立たなくしたいからというので、ジェネシスを始められました。
一般的な話ですが、キズ跡といっても、ピンキリで、縫ったキズにそって、赤い、というのは、普通のキズ跡です。ゆっくり色が肌色や白っぽくなってきます。
でも、赤く盛り上がっているキズ跡は、ケロイドと呼んだり、肥厚性瘢痕というモノです。これは、そのまま放っておくよりも、何か治療をしてあげないと、できてしまった患者さん自身が、見た目の問題だけでなく、キズ跡がつっぱる、とか痒いとか、いろいろ困ったことが出てくるわけです。
こういう場合、保険で、ちゃんと治療ができるようになっていて、ステロイドの注射をしたり、薬を飲んだり(結構長いです、最低半年以上です)、薬を塗ったり、などなど。
でも、絶対これが何にでも効く!という治療法はありません。保険で治療されていた方も、あまりにも時間がかかりすぎるので、その割に良くならないから、ドロップアウトされる方もかなりいらっしゃいます。
自費治療だと、レーザー治療をしていくこともあります。そのキズ跡の性質というか、効く効かない、というのは、どれをするにしろ、根気がいります。もちろん、時間も、自費であっても、かかります。
また、完全に消すことはできません。少しでも早く目立たなくする、痒みやツッパリ感だけでも、取ってあげる、というのが目標になってきます。
その中で、有名なのが、ステロイド注射かもしれません。昔からある治療法です。
これは、ステロイドを注射することで、ケロイドや肥厚性瘢痕の盛り上がっている赤み(これは、血管の塊だったりするわけなので。血管だけで出来ているわけではありませんが)を平らにしていくのに、使います。あくまで、ふくらんでいるモノを平らにしていくのが目的です。
ステロイドの作用の一つである、血管萎縮作用を利用するわけです。
本当に、盛り上がっているキズ跡には、やる価値はあると思いますが、とても痛いので、患者さんのほうが、嫌がったり、我慢できなかったりすることもあります。
でも、ずっとやるわけでなく、2回くらいでしょうか。それでしばらく様子を見ます。
もっと続ける場合も、特殊な場合であるかもしれませんが、ずっとするものではありません。
ステロイドの効果というのは、この場合、ゆっくりゆっくり効いてきますから、効いていないから、とバカバカっと続けて打っていると、気がついたら、ステロイドの副作用が出てしまって、まだまだ副作用が続いていく、という恐ろしい状態になります。
これを知らずに、やっている医師もいるわけです。
特に、美容外科で、皮膚科・形成外科のちゃんと基礎を勉強していない医者だと、どんなキズ跡にもステロイドを注射すればいいと思っているバカがいて、ビックリします。
そういうバカと一緒に働くと、見つけるたびに、全部止めていかないといけません。また、患者さんにも、説明してからでないと、治療を止められませんから、どう説明したものか悩むとことです。(たいていは、副作用が出てきているから、もう止めます、とか、今の状態には、もう効かないので、というしかないんですけどね。)
適応のないキズ跡に、ステロイド注射をすると、どうなるか?
もちろん、副作用が出ます。正常の皮膚に、働いてしまうわけですから、皮膚が萎縮して、ペラペラになります。その分、血行はかなり悪くなるので、、体は、なんとかして、毛細血管を増やして、血行をよくしようとするわけで、毛細血管がどんどん増えます。ペラペラの肌に、毛細血管がわんさか、という状態になるので、灰色っぽい皮膚に、赤みが混じるという、わけわからん、おかしな皮膚になってしまうわけです。
普通のキズ跡の赤みを取れる、と思っている美容外科医が多いんですが、普通の分には、ほとんど効きません。異常な状態ではないので。ちょっと効いた、ちょっと良くなった、としても、副作用のほうに悩まされるはずなので、わかっている医師は、絶対にやりません。
ステロイドの塗り薬で、副作用が、ここまでいくことはめったにありません。(毛細血管が増えるのは、長期塗ることで、出ますけどね)。よほど、適応外のきついステロイドを大量に、長期塗っていた場合とかは、また話は別です。
それだけ、注射は、濃いし、エライことなわけです。
ケロイドや盛り上がっているキズだからこそ、萎縮して、縮んでくれたらいいわけですが、普通のキズに注射しても、これはホントに副作用ばかり出てしまう、目立ってしまう、という歳合うパターンなんです。
その患者さんの話に戻りますね。
その方は、なにかついでがあったらしく、またその手術されたクリニックに行ったそうで、キズ跡のことを言ったら(こんなになるって、説明されていない、ということです)、注射をキズ跡にされたそうです。
何を注射したのか、全く説明もなしに、です。
その話をしてくださったので、恐らくステロイド注射だと思うんですが(それ以外、注射するようなもの、ありませんからね)、もう止めておいてください、と言いました。盛り上がっているわけでもないし、適応がないし、副作用が出るだけなので、と言いました。
その後、何度か、うちでジェネシスとかされていて、しばらく来られてないな、と思っていたら、久しぶりに来られて、キズ跡をみたら、アレっ?皮膚が委縮してる?気のせい?どうして???
反対側も診ると、そっちはもっと萎縮してました。
「萎縮」というと、わかりにくいと思いますが、皮膚が薄くなるので、そこだけ凹んでて、灰色がかって、毛細血管が増えている、という状態です。
「ここ、注射しました?」と聞くと、1か月半くらい前に、またそのクリニックで、注射を勧められ、やったそうです。
そこで、赤みも全部消えるから、と言われたそうで。。。
消えないっって!!
注射はもちろん無料でしてくれているはずなので、その医師なりに、なんとかしてあげようと思ったのかもしれません。手間暇かかることですから、悪意からやっているわけではないと思います。きっと。。
でも、結果は、逆なんです。副作用が出てます。。。
こういうクリニックの恐ろしいところは、悪意があってもなくても、無知な治療と説明不足とで、結局困るのは、患者さんなわけです。
もう止めておいてください、と言ったのに、どうしてまたやったんですか?と患者さんに聞くと、赤みが全部消えるから、と言われたから、じゃあ、それなら、とやりました、とのことでした。
気にしている方に、そんな自信を持って、「消える」なんて言ったら、誰だって、やりたくなりますよね。
ちゃんと副作用のことも説明して、その上で、こういう副作用が出るけど、どうしても気になるなら、こういう方法もある、と説明したうえで、患者さんに選ばせるならまだしも、なんの説明もなく、いいことだけ言って、やったらいかんやろ、と思います。
また厄介なのが、増えてしまった毛細血管は減らすことはなんとか可能です。(全部消すのは、多分無理です。体はせっせと作ってきますから。)
ですが、このペラッペラになった皮膚が、いつ戻るのか、戻す薬や治療法はあるのか。。。。はっきりいって、かなり難しいです。。自然に回復を待つしかないでしょうが、すごい時間がかかるでしょう。
どれくらい?と聞かれても、はっきり言って、わかりません。
こういう、戻すのに大変なことを、一度患者さんともめたところに、また無知ゆえに、あるいは、適当にやって黙らせてしまえ、みたいに、どんどん適応外のことをやっていくという、この恐ろしさ。。。
もうね、こういうクリニックとはね、やっぱり関わったら、いかんのです。
患者さんが医学的なことをわからないのをいいことに、(向こうも医者もわかっていないことが多いんですが)どんどん、次のことを攻めて来ますから、どんどん悪循環にハマって行きます。戻せるうちはいいですが、戻せなくなることも、もちろんあるわけです。
また、そこから、シミを薄くする薬? なんかわけわからんものですが、塗るように言われたそうで、塗っていいか、聞かれましたが、中身が何か分からないのに、いいですよ、と答える医師はいません。
(手術の固定のテープで、かぶれて、シミになってしまわれました。それについては、全くのスルーされたそうで、患者さんから言って、初めて薬かなにかが出たのかな。。?)
こういう美容外科で出される美白剤というのは、たいていハイドロキノンかトレチノインと、相場が決まっているんですが、本当のところはわかりません。中身がわからないので。
でも、そのどちらにしろ、何の説明もなく、渡す薬ではないですし、それぞれ副作用があります。使い方を間違えると、反ってシミになるわけです。
またまた、説明もせずに、薬の名前も言わずに、渡すようなクリニックです。ダメでしょう~。どう考えても。。
2回目の注射は、私は、患者さんから何も聞かされていませんでしたから、そのままレーザーをあててました。
同じところを、別々のクリニックで、別々に治療する、というのは、普通やりません。お互い何をしているのかわからないし、反って悪化することもあるし、うちでは、他院との同時期・同部位の治療はお断りしています。
また、知らずに、3回目4回目とされていたら、皮膚はますますおかしくなるばかりで、良くなるはずがありませんからね。
なので、その方にも、そこのクリニックと関わって治療するなら、今後うちでは治療はしません、とお伝えしました。
関わってしまった分は、もう仕方ないことですが、その後も、関わり続けて、さらに泥沼にはめていかれるので、ホントにもう、関わることを、患者さんご自身で、断ち切らないと!自分の体のことですからね。
あれ以上、副作用が出ずに、よくなることを祈るばかりです。
皆さんの中に、キズ跡に、美容外科とかで、ステロイド注射をされている方がいらっしゃったら、もう一度冷静になって考えてください。
今の状態で、満足してますか? 注射が始まって、本当によくなっていますか?
もし、違うなら、なんかおかしいと思うなら、セカンドオピニオンで、ちゃんとした皮膚科・形成外科で、診てもらってください。副作用ばかりが出てしまう前に。