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    柴 亜伊子
  • 京都四条 あいこ皮フ科クリニック

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入れ墨やタトゥーの取り方

大阪市の職員の入れ墨を入れていた人数、110人。

ビックリしましたね~。

普通の民間の企業だったら、ちょっと考えられないかな~。

民間企業で、入社前に、刺青のチェックがあるわけではないでしょうが、まあ、いわゆる大手企業やお堅い企業で、刺青をしてる人は、いないでしょう。

医者でもやってるヤツって、いるんですよね。大学時代の同級生・先輩・後輩にはいませんでしたが、昔勤務していたところで、入れていたドクターがいました。(普通は、やらないでしょう。。。結局、子供とプールにもスーパー銭湯にも行けない、ということで、消してましたけど。。)

大きな声で、隣近所や職場で、「私、刺青しています!」って、胸張って言えませんよね、普通。

刺青って、そういうことです。

須磨海岸でしたっけ?刺青・タトゥーを入れてる人お断り、にしたのは?

 

アメリカとかで(高校留学とか)、タトゥーを入れてきた患者さんの言い分は、「むこうでは、警察官も、みんなやってるから、悪いことだと思わなかった」と。

安室奈美恵さんが、昔、腕のタトゥーを、紅白では隠すように、とNHKから言われましたよね。子供や若い子が、カッコいいと思ってマネするといけないから、というのがNHKの言い分でした。まあ、そりゃ、NHKは、そうなりますよね。

 

アメリカって、確かに、タトゥー入れてる人、多いと思います。日本より。

でも、アメリカに留学経験のあるドクターやその他の何人から聞いた話ですが、アメリカでも、ちゃんとした職業についている人は、タトゥーは入れていない、と。

アメリカなんて、人種差別だけでなく、階級社会ですからね。

タトゥーを入れていたら、上の階級では、いにくいんじゃないでしょうか。。

 

さて、入れ墨やタトゥーの取り方ですが、(ちなみに、「入れ墨」は、医学用語では、「刺青」と書きます。)、手術かレーザーか、まあ、どちらかしかありません。

あとは、わざと刺青の上から、傷をつけて、(メスやハサミなどで)、汚い傷で隠す、というやり方です。

「刺青」ではなく、事故や火傷して傷跡がついた、みたいに、ウソに置き換える、という感じです。

まあ、最終手段ですかね~。

 

うちは、こういった処置も手術もやっていませんし、刺青用のレーザーもおいていなので、刺青の患者さんは、お断りしています。何もできる処置がありませんからね~。

 

以前は、刺青にレーザーをあてていましたが、一般の方が考える以上に、ものすご~く大変です。

レーザーをあてる時の痛みや、消えるまでの時間もえげつなくかかりますが、一番大変なのは、お金です。

もちろん、一切保険は通りませんから、クリニックによって、値段設定はさまざまですが、まあ、信じられないお金がかかります。

刺青の大きさにもよりますが、途中で、お金がもたなくて、止める方も多いです。

ほとんどの患者さんが言われるので、「取るのに、そんなにお金がかかるとは思わなかった。。。」ということです。

入れるのは、オシャレタトゥーとか、結構安くで入れられるそうですね。

だから、気楽に、何も考えずにやっちゃうんでしょうか。。。

ひどい人で、「消えないとは知らなかった」という人が時々います。

たいてい、若い子ですけどね。。頭、悪すぎ。。。「消えないんだったら、やらなかった。。。」ということらしいです。

タトゥーや刺青、アートメイクもそうですが、針を、自分ではなくて、他人に刺していきますから、これは、医療行為に当たります。

医師でもないのに、他人に針を刺す、というのは、完全に違法行為なわけです。

違法行為をしているお店が、わざわざ、「一生消えませんけど、いいですか?」と教えてくれるものでしょうか。。教えて、止められたら、儲かりませんから、あまり教えないんじゃないですか。

アートメイクですら、副作用、全然言わずに、やってるお店、多いですからね~。

ちなみに、アートメイクも刺青と、医学的には同じですが、刺青・タトゥー・アートメイク、これらをしていると、MRIという検査は、絶対できません。普通の病院は、やりません。

色素の中に、鉄粉が入っていることが多くて、MRI検査をすると、鉄粉に熱が発生して、ものすごく危ないわけです。だから、普通の病院は、断ります。

CTは受けれますが、MRIでないと、得られない情報がありますから、体の病気とアートメイクと、どっちが大事やねん、とい話です。

今は、病気じゃなくても、人間生きていたら、いつか何かの病気になるわけで、MRI検査も必要になる時が来るでしょう。

もうね、あ~あ、あ~あ、って感じです。

そういうことを全部わかったうえで、されるなら、止めませんけどね。まあ、大きなお世話でしょうが。

 

さて、レーザーで早く取ろうと思ったら、パワーを強くしたら、たくさんの色素は、いっぺんに破壊はできますが、副作用があります。

刺青は、普通のシミと違って、ものすごい異物なので、色素の量が、ハンパなく多いんです。

シミにあてるのと、同じパワーをあてても、ものすごい熱が出ます。

だからムチャクチャ痛いです。というか、どなたも痛そうにされてます。麻酔のクリームを塗ったり、麻酔の注射をしたり、麻酔はするんですが、刺青が大きいと、麻酔薬を使える量にも、限界があるんです。大きすぎたら、一度にできる範囲も限られてるし、それでも麻酔の量が足りないので、全部の痛みを取ることはできません。

(だから、刺青が大きいと、余計な時間と回数がかかってきます。)

冷や汗をかきながら、レーザーを受けてる方も大勢いらっしゃいました。

 

この色素の量は、誰にやってもらったか、によるんです。

本当のプロだと、大変で、色素がきっちり入っているんですね~。かなり濃いです。とってもキレイに刺青が入っているでしょ?

たいていの若い方は、オシャレタトゥーってヤツですが、機械彫りなんですかね。そういうお店に行ったことがないし、入れてるところもちゃんと見たことがないので、わかりませんが。。。

ホントのプロほどではないですが、これも結構色素が入っています。

一番、色素が少ないのが、自分で墨汁で入れたとか、友達同士で入れた、みたいな、素人が入れたヤツです。

見た目も汚いでしょ?まだらだったり、色の濃いところと薄いところと。これは、うまくいけば、早く(回数少なく)取れます。

お店でも、素人に毛の生えたような刺青があって、ホントの素人よりは、見た目はマシですが、レーザーで消そうとしたら、これはこれで大変で。。。

プロが入れた場合は、ある程度、均一の深さで入れてることが多いようなんですが、それだとレーザーも反応しやすいようです。

ところが、素人の場合は、入れるのもヘタクソなので、深さがまちまちで、そのため反応がまちまちに出ることがあります。

深さもまちまちなら、入っている色素もまちまちで、お店でやったけど色むらの濃淡があるやつとかですかね~。

 

で、その色素に反応する時に、絶対熱が発生しますから、その熱のダメージが周りの皮膚に伝わるわけです。

そのせいで、レーザーによる跡形として、赤みや茶色いシミになってしまいます。

時間がたてば、かなり薄くなることもありますが、かなり強い反応が出ると、消えない傷跡になるわけです。

レーザーだからといって、全くキレイに、何事もなかったようにはならないわけです。

肌色の黒い方は、強い反応が起こると、逆に、その部分の肌色が抜けてしまうことがあって、そしたら、刺青は消えたけど、白い斑点として、残るわけです。

「色素による刺青」ではなくて、色が抜けてしまったことによる、新しい「刺青」になるわけです。

術後の跡形ですから、いわゆる会社や学校で禁止されている「刺青」扱いには、ならないとは思いますが。。。見た目は、かなり目立ちますよね。。。

 

よく広告で載っている写真の、跡形がまったくないようになんて、あれは、かなり無理があるでしょう。

経過のとてもいい場合、遠目で見たら、わかりにくい、ということはあります。が、そばで見れば、「ああ、ここだったか。。」とわかると思います。

墨汁で自分で、というくらいなら、かなりわかりにくくはなりますけどね。

 

強い反応が出れば、それだけ、この跡形の副作用は強くでるわけで、副作用が出にくいように、あまり強く当てない場合、それだけ反応も弱いので、回数と時間(お金も)が、余計かかるわけです。

どっちを取るか、ですね。

 

刺青の色も、一番反応してくれるのは、黒です。まあ、こげ茶とか紺とか黒い色素があるものは、まだマシです。赤も、なんとか反応します。

でも、鮮やかなブルー(水色みたいな)や緑とか黄色系ですね。最後に黄色い色素が残ってきます。

刺青に力を入れておられるクリニックであれば、黄色にある程度(あくまで、ある程度で、完全に、ではないと思います)反応するレーザーを置いておられますが、まあ、普通のクリニックではないでしょう。

刺青をやってるところでは、黒と赤がメインですね。

残りは、違うレーザーで削ったり、手術で切り取ったり、とコンビネーション治療です。

もちろん、削ったり、手術も、傷跡は残るわけで、これまた一生消えません。

でも、最初から、削るのも手術で切り取るのも、大きさに限界があるんです。

 

小さい刺青であれば、最初から手術して、1回で切り取ってしまうのが、一番早いです。(1回で、切り取れる大きさであれば、です)

結婚式前に、あちらのご家族にばれる前に、ご両親が大慌てで、連れてこられることもあります。

傷跡は消えませんが、刺青よりはマシ、という判断のようです。

 

レーザーで、とりあえず消せる(薄くできる)ところは消して、残った部分を、削ったり、切り取ったり、とすると、まあ、なんとか対応できるかな、という感じです。

 

手術でも、ある程度の大きさだと、分割切除といって、何度かに分けて手術をしていくこともありますが、次の手術まで、3か月とか半年とか、範囲や場所によっては、ちっともs術が進みません。

もちろんレーザーにしても、同じ場所を次にやるのに、3か月以上空けて、やっていくことが多いと思います。

お肌の状況と、そこのクリニックの医師の考え方にもよるでしょうけどね。

お金があっても、えげつない時間がかかるわけです。

 

刺青って、確かに個人の自由だし、好みですけど、皮膚科医からすると、(皮膚科医じゃなくても)、まあ、入れるものではないですね。

どうしてもしたかったら、タトゥーシールで、いいんじゃないですか?すぐに剥がせるし。

 

あと、あまりご存知ないでしょうが、刺青する時の針、一人一人に、使い捨てをしてるお店、どれだけありますか?

もともとが、違法行為なわけです。

1回ずつ針を使い捨てていたら、コストがかかるわけです。

ず~っと、何人にも、同じ針を使い廻しているところも多くて、そのせいで、いろんなばい菌が移されるわけです。

c型肝炎ウィルスはもちろんのこと、エイズもそうです。これらは、どちらも、かかったら、えげつなく大変です。

刺青は絶対血が出ますからね。他人の血液って、ものすごく危ないんです。どんなバイ菌もってるか、わかりませんから。

そういうお店って、衛生状態も悪いことが多いし、来ているお客さんの層も、恐らく、そんなにガラが良くないでしょう?アートメイクは別として、まともな仕事をしている人で、刺青を入れてる人が少ないってことは、そういう方々から、血をうつされてることになるわけです。

普通の病院に入院したら、刺青・タトゥーをしているか、入院時に聞かれます。

これは、その人の血液に何が入っているのかわからないから、採血とか注射するときに、する看護師や医師が、間違って、針刺し事故とかになったら、大変だから聞かれるわけです。

ある意味、医療者っていうのは、毎日危険が伴います。最低限の防衛手段なんです。

(入院時や前に、必ず、そのばい菌をもっているか、という最低限の検査はされますが、潜伏期間といって、検査してもわからない期間がありますから、これはとても重要です。

もちろん、刺青・タトゥーを入れている方は、そういう病気は発病することもありますから、その辺は検査は、かなりチェックされると思います。

刺青って、命がけですよ。ホントに。。

最悪、命に関わってくるので、ほんの若気の至り、で済まないんです。

そういう、うるさい会社に勤めてないから、かまわない、という問題で済まないわけです。

やっぱり、入れるものではありません。

手術やレーザーで消すことも大事ですが、ばい菌の検査、(感染症検査と言います。刺青入れてるから、調べてほしいと言えば、たいていの病院が調べてくれますが、保険は通らないでしょう。)は、必ず、絶対受けてください。こちらのほうが、重要だと医師として、思います。

 

 

 

 

 

 

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医療