今回の学会でも、ハイドロキノンの美白剤についての講演がありました。
やはり、カネボウのロドデノールについても、話題が出ましたが、まだ原因が究明されていませんので、何もはっきり言って、わからない状態です。
ハイドロキノンに、成分が非常に似ている、ということはわかっていることなので、改めて、ハイドロキノンの副作用についての、注意喚起がありました。
今日の学会で、近大の川田先生のご講演内容です。
ハイドロキノンは、チロシナーゼ活性を抑制することによって、シミが薄くなっていくわけですが、副作用に、一時刺激・接触性皮膚炎(かぶれ)・白皮症・尋常性白斑・組織黒変症・白内障・指趾末端や爪甲の炎症後色素沈着があります。
2001年に、日本で、化粧品の配合が認められ、私たちドクターも、自分たちで、調合することなく、メーカーからハイドロキノン製剤を仕入れて、患者さんに処方することができるようになりました
美容皮膚科では、ハイドロキノンは、美白剤として、当たり前のように使われていた薬です。
特に、今回、この組織黒変症が取り上げられました。
他の先生もおっしゃってましたが、日本人はならないと思われていたそうです。
私も、勉強不足ですが、ハイドロキノンでそんなことになるとは知りませんでした。
ブラジル人とか黒人とか、肌色の色素の濃い人種の方に出る状態だったようですが、台湾人で過去に報告があり、アジア人にも出ることがわかって(その前に、インド人で報告があったそうですが、我々日本人からしたら、インド人は、「アジア人」ではないような。。黄色人種でもかなり肌色が濃いですよね。かなりの西アジアですね。アジアなんでしょうけど。。)、で、いろいろと改めて、そう思って診ていたら、日本人にも出ていると。
症例写真が出ていて、そういえば、こんなの診たことあるな、と。
化粧品などによる、炎症後色素沈着や、肝斑にいらんことされて、悪化した症例だと思っていましたが、組織黒変症とよく似ています。(診断をちゃんとつけないと、似ているから、絶対そう、というわけではありませんが)
まだカネボウの真相がわからない今、私たち美容皮膚科医ができることは、ハイドロキノンを容易に、安易に使っていましたが、(医師が使う場合)、ハイリスクではないけれど、ローリスクがあると、再度認識して、ちゃんと診察の上、おかしかったら、すぐに止めさせる、というのが、正しく、ハイドロキノンを有効に使っていく、ということを心すること、との講演内容が多かったです。
で、やはり、市販に関しては、厚労省が規制をかけるべきと。
EUでは、2001年から化粧品としては禁止、FDAでは、2006年に、市販のハイドロキノンの規制が発表されていて、世界的に、規制の方向にあるから、日本もそうする時期なのかも、との意見でした。
そんな薬剤ですから、ネットで個人輸入で買うとか、論外です。
どんな偽物が入っているのか、エライことです。
ドクター用の個人輸入の怪しい、安い値段で買える業者が、怪しいFAXや案内を送ってきますが、正規品である保障なんて、ゼロですし、中身も全くわかりません。
学会で認められている製剤を、正規ルートで、正規品を個人輸入して、何か患者さんに凝った場合、学会の賠償責任保障は、保障してくれますが、おかしなルートから購入したものは、一切、保障しません。そういうものに手を出すことを、止めるように再三言われているわけですから。
一般の方が知らずにネットで買うのは仕方ないとしても、ドクターが買って、患者さんに売るなんて、もってのほかです。
もちろん、正規品のハイドロキノンであっても、クリニックによっては、ろくに診察もせず、ハイドロキノンを受付で売っているところもあり、そんなところは、ダメだと思いますよ。
自家調合で、すっごい濃いハイドロキノンを出しておいて、白斑になった患者さんを、結構診たことがあります。
(なんで、そんな高濃度で出すのか、そんな高濃度で出しておいて、診察もしないのか、私には、全く理解できませんが。。。)
シミの診察で、化粧を落とさず、薄化粧であったとしても、まともに診れるわけないですし、クリニック選びは、そういうところも、ちゃんと見てくださいね。
ハイドロキノンの使い方や、どれくらいの濃さなのか、保存方法なども言わないところはダメです。
(まして、美白剤を出しておいて、成分を言わないところは絶対止めましょう。)
うちでは、ハイドロキノンは、まあ、置いてますが、めったに使いません。
私は、7年ほど前から、ずっとサンスターのエクイタンスです。(医療機関専売品の医薬部外品です9
もし、ドクターで、患者さんに美白剤を処方するのに、ハイドロキノン以外で、お探しであれば、これは、お勧めです。
発売されたのは、20年ほど前です。
チラシナーゼ活性を抑制しますが、もちろん細胞毒性はありません。
(副作用の一番の問題は、「細胞毒性」だと思うんですよね。)
美白成分は、リノール酸です。
肝斑に有効であった、という論文も出てますし、(二重盲検ではありませんが)、アトピー性皮膚炎の炎症後色素沈着に使用した効果と安全性についても論文が出てます。
(何年か前に、確か、美容皮膚科学会か皮膚科学会で、学会発表もありました)
希望小売価格は、10g¥3.150です。顔中塗ったら、月に2本はいりますが、それでも、月¥6.300で済みます。
発売して20年経っていますから、かなり安心して使っていただけると思うのですが。
ハイドロキノンって、いくらクリニック側が、ちゃんと説明しても、やっぱり患者さんの中には、おかしな使い方をする方がいて、(遮光しないのに昼間塗るとか、擦り込んでいるとか、赤くなってきたのに、塗り続けるとか、)ご本人が正しく使わないと、いい薬も毒になってしまいます。
エクイタンスなら、まあ、安心してお出しできるので、ずっとエクイタンスを使っています。
市販の、カネボウ以外(今回対象になったもの以外)の美白剤の中には、普通は、危ない成分は入っていないはず(当たり前の常識でみんなが気にもしていなかったことが、今回、起こったので、えらいことになったわけですが)ですから、「美白剤」としては、そこまで「白斑」を起こすものでは、理論上、ないはずです。
例えば、資生堂のトラネキサム酸、4MSK、花王はカミツレでしたっけ?コウジ酸やビタミンC(アスコルビン酸)などなど。
そんな神経質に心配するような成分ではないです。
っていうか、市販品で、そこまで高濃度にも混ぜていないから。
なので、各メーカーは、何か他で効果っぽいものを出さないと、商品が売れないから、ピーリング系の作用をする成分を入れて、ごまかす、ということが出てくるわけで。。。
(それを、私は、把握もしていないのに、ピーリング剤をのべつまくなし使うことになるから、止めなさい、と言っているわけです。把握して、使うなら、まだしも、ですが。)
そういうピーリング成分を入れていない、肌にそれほど刺激のない、美白剤もありますが、値段と効果(患者さんが宣伝から感じた期待の効果)が、全然割に合わないので、どちらにしろ、使うのは止めたら?というわけです。
(詳しくは、「おススメしない化粧品シリーズ:高機能化粧品」を、ブログ内検索して、読まれてくださいね。)
本当に、本当の意味での、「美白」がしたかったら、やっぱりクリニックに行かないと無理でしょう。
クリニック行くのが、怖かったり、どこに行っていいのかわからない、とか、行くのがめんどくさい、という方は、市販の美白剤は買わなくていいので、日焼け止めをちゃんと塗りましょう。(ブログ内で、「日焼け止め」で検索をかけて、よろしければ、全部お読みください。)
それが一番の根本的な「美白」です。
一番、お金をかけない方法です。
美白だけでなく、アンチエイジングの最重要課題ですよ。
逆に言えば、日焼け止めも正しく使わない人が、1億円かけて、美白剤を買っても、効きませんよ。
(いや、1億かけたら、さすがに、何もしないよりはましか。。?)
魔法みたいなものはありません。
コツコツ、普段の努力と、ちょっと助けてもらうために、ちゃんと診てくれる美容クリニックで、美白剤の相談をする、というのが、一番安全で、確実な美白の王道です。
ちゃんとしたところなら、何かあった時、対処してくれますからね。状況も把握されているわけですから。
クリニック選びは、大変かもしれませんが、いくつか回ってみると、違いがなんとなく、わかってくると思いますよ。
ご参考までに。