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    柴 亜伊子
  • 京都四条 あいこ皮フ科クリニック

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先日の美容皮膚科学会で、なぜか美容外科学会との共催セッションというのがありました。

今までで初めてかも。

 

美容皮膚科でも多少は手術の話はあるかもしれませんが、いえ、やはりあまりないか、外科ではないから。

美容外科医からの経験を踏まえた講演を聴くというのは、確かにいいのかもしれませんね。

 

学会当日は、いくつもの内容の違う講演が同時に行われているので、美容外科の講演は聴けませんでした。

スレッドリフトと言って、糸を入れてリフトアップさせるという手術の話と

PRP療法に、線維芽細胞成長因子を加えて注入する治療と

脂肪注入の話でした。

 

いくつもの講演が重なった場合一番自分に関係のあるところに話を聴きにいきます。

再生医療(PRPのことです)も手術も(脂肪注入は、注入する脂肪を取ってこないといけないので、これは手術です)やらないので、他に聴きたい講演があると、自然と聴けません。

 

で、抄録からですが。

 

PRP療法と言って、自分の血小板を血液から採ってきて、それをシワなどに入れるという治療があります。

今は、再生医療で申請をして許可をもらわないとできなくなっています。

あやしいクリニックが多いため、厚労省がかなり規制をかけたためです。

 

以前にも書きましたが、学会で、PRPに線維芽細胞成長因子(FGF)を入れてはいけないということがかなり前に言われていて、そのあと、学会でPRPのセッションはほとんど聴いていませんから、その後どうなったのかは確かに知りません。

 

学会がどうしてやるな!というかというと、非常~にトラブルが多く、またそのトラブル(線維芽細胞を活性化させることで、確かにコラーゲン等が増殖しますが、制御が利かないので、ぼこぼこになる、ふくらみすぎるなど)が元にもどしにくい、ということがあったためです。

 

ただ、当時でも、私はこう工夫して、FGFを添加しているけれど問題がない、とPRP治療を積極的にされているドクターもおられたと思います。

 

学会などそういう正式な場で発表される場合は、ある程度自信があって、自分の信念に基づいてされてきて、発表されているわけですから、確かに、学会で問題とされているトラブルとはあまり関係がないのかもしれません。

 

その辺は、実際どうなのかはなかなかわかりません。

 

実際の被害の患者さんを診て初めてわかることかと思います。

 

 

今回の講演で、「患者満足度97%」と極めて高い数値が抄録に記載されていました。

 

一般的になんでもそうですが、こういう「なんとか満足度」って、どうやって調べたの?というのが実はとても大事で、調査の仕方を確認すると、それ、満足度っていう?!みたいなこともあります。

 

例えばよくあるのは、2回目したら、「大変満足」とか。

満足しているからこそ、2回目をするんだ、という理屈です。

でも、満足していないから、まだ足りないのかと思って2回目をしているのかもしれないし、最初に「○○回以上するように」と言われているから、素直に2回目を受けているだけなのか、2回目を受けるように言われたけど、結果に満足しているわけではない、などなど、いろいろ患者さん側にも事情があるわけで、それこそ患者さん全員に、アンケート調査をするしかないかなと思います。

アンケートを取る患者さんをもちろん選ぶのもNGなわけです。ほんとは。

医学的な評価ではなく、「患者満足度」とおきかえるなら。

 

で、実際どうやって調査されて97%なのかは、講演を聴いていないのでわかりません。

でも、抄録には、この驚異の数字は残るわけです。

(ちなみに、うちの患者さんで、こういう「患者満足度」調査ってやつで、「○○クリニックは、患者満足度高い」って書いてましたよとお伝えしたら、5,6年通って、アンケ―トは一度もなかったと言われてましたが。。。)

 

PRP療法だけで、凹みやボリュームロスを、ヒアルロン酸注入ほど補えるわけでは全然ないんですが、確かにそこにFGFを加えると、コラーゲン増殖しますから、しかも自分のコラーゲンだし、そりゃあヒアルロン酸よりかなり長持ちすると思います。

 

先日、PRP+FGFをされて、「顔がおかしくなった」とうちに来られた患者さんも、確かにコケていたと思われる頬もふっくらとされて、最後に治療した年数から言っても、かなり持っていると思います。

見た目で、その施術のせいで、「おかしく」はなってはいませんでした。

 

ただ、触ると、皮下で、ぼこぼこしている。。

 

注射されたであろうポイントで、おそらく、コラーゲン増殖がピンポイントで起こっているので、それが、注射した部位(頬~口回り、顔の目からした全部という感じ)全部で起こっているので、触ると、ぼこぼこします。

エコーなどで確認したわけではないですが、触診ではそう診断しました。

 

口元のたるみによるシワを気にされていたので、本来であれば、たるみ治療となり、うちでは、光治療機のタイタンというのを使うんですが、この方には本来とても良いものだと思いますが、問題は、そのぼこぼこしている皮下です。

 

確かに異物ではないし、自分のコラーゲンでしょうから、問題はないのかもしれません。

(タイタンの光は、おそらくそのぼこぼこまで届くため)

 

でも、かなりタイトニングさせることができますから、顔をキュッと引き締まることで、ぼこぼこが逆に目立つかもしれない。

 

それはやってみないとわかりません。

 

皮膚も薄いし、もともとのご自身の脂肪層もおそらく薄い。

(体つきからみても。PRP+FGFでふっくらと見えているだけで、中でどれだけがそのせいで膨らんでいるのかはわかりません)

引き締まった時に、クッションになるものがなければ、下の形はそのまま出てきてしまいます。

 

これはよろしくない。

 

で、他の治療でしていくことになりました。

もちろん、オーソモレキュラー療法も併用で、自分のコラーゲンを自分で作らせる。いつでも作れるようにちゃんと材料は入れておく。

増えすぎて、もし中でおかしなことになっていたら、マクロファージが食べてくれたらいいんですけどね。なかったことみたいに。

まあさすがにそこまではいかないでしょうけど。塊が細胞からしたらでかすぎるので、貪食して、というレベルではないです。

 

昔の話ですが、「金の糸」を入れて、永久に若々しい肌にする、みたいなあやしい治療法がありまして、24Kの髪の毛みたいな細い金の糸を、皮膚内~皮下?にたくさん入れて、若返りを図るというものでした。

効果についてのちゃんとした論文は確か出てなかったかと思いますが、ようは、異物反応で炎症を起こさせるので、それで線維芽細胞が活性化されコラーゲンが増えるのでは?みたいな感じです。

ただ、あまりにもリスクが多すぎで。。

 

顔から金の糸が飛び出してくるし、抜こうと思っても、顔にたくさん張りめぐされているので、スーッと簡単に抜けるものではないです。

そして、金の糸は非常に浅いところにも入っているし、レーザーや光治療、RF治療も、金の糸にどんな働きが出るかわからない。熱で溶ける可能性もあるから、下手に触らないほうがいい、レーザーとかはもう一生あてるのは避けたほうがいい、という感じでした。

 

普通に考えたらやらないわけですが、まあ、それでもやる(金の糸が入っているのに、レーザーやRFなどを照射する)クリニックはやるし、という時代でした。

 

これはほんとに10年以上前の話なので、もう5年くらい前から学会では、禁止されています。

 

ヒアルロン酸にしろボトックス注射にしろ、必ずもとに戻る、というのが一番の欠点ではありますが、だからこそ安全なわけで、一番の長所です。

 

取り出せない、元に戻らない、というのは、それで満足度120%だったらいいとは思うんですけど。。。

 

で、そういうものが皮内や皮下にあると、本当に照射していいのかどうかわかりません。

深達度の浅い、侵襲性の低いものじゃ問題ないと思いますが、深達度がある程度あって、侵襲性もそここ強い、となると、その増えたコラーゲンのところでどう反応するのか。。

 

美容医療は、元の状態を損ねる、ということは本来絶対にやってはいけない治療で、だからこそ、侵襲性のあるものは、他よりも一倍気を付けないといけないことだと思います、医者側がね。

 

リスクのしっかりした説明と

(PRP+FGFで、しこりが出るのは当たり前と言えば当たり前。だって、コラーゲン増やしているから。)

不可逆性のもの、あるいはそれに準じるものは、私はあまり勧めません。

まだ手術は、ちゃんとしたところでやれば術式とか、ある程度決まっているので、他のドクターが診てもこうしたんだろうなと予測がつくと思います。

手術も元には戻せませんが、修整がある程度可能。

 

 

今の世の中、数字って、わかりやすいですよね。

順番や順位とかなんでもそうですが、数字で表して評価する。

確かにわかりやすいですが、その数字の出どころを探ることが大切です。

数字の魔力に騙されないように。

せっかくの美容医療、メリットデメリット、必ず両方あります。どんな治療法でも。

最後に、トータルならメリットが勝つ、となるほうに、ご自身で選択できればなと思います。

 

 

 

 

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エイジング, 医療, 学会で得た知識, 栄養・食事