今、皮膚科のニキビの保険診療のメジャーな薬は、やはりディフェリンゲルになると思います。
基本、この薬は、ニキビのところだけでなく、予防のためにも、広げて、あるいは全体に塗る薬です。
そこに、化膿止めのダラシンTゲルやダラシンローションなどを足すか、あるいは他のモノを追加して使うのか、いろいろ医師によって、好みが分かれるところでしょう。
この、ディフェリンゲル、確かに、今までの日本の保険診療にはなかった類の薬になるので、ある意味、保険診療の救世主です。すごく簡単に言うと、ピーリング剤になるんです。今まで、ニキビにケミカルピーリングをするのは、全て自費で、保険は一切通りません。また、ピーリングと保険の薬を同時に処方・処置をすることは、混合診療と言って、禁じられています。
そのピーリング剤みたいなのが、保険で処方できるとなって、今、一番新しい薬です(と言っても、認可がおりて発売されたのは、もう2年くらい前でしたっけ?)
この薬の合う方にとっては、とてもいいと思います。ニキビもそんなにひどくなくて、そこだけちょっと塗ったら、早目に治るとか、全体に塗らなくてもいい方ですね。
ただ、合わないと結構ツライものがあります。
私は、この薬を保険で出す場合、顔中に塗るとか、ニキビの周りも含めて広めに塗るとかは、絶対させません。ニキビのあるところだけ、ちょんと1日1回夜に塗ってもらうだけです。
予防ではなく、出来てしまったニキビを、早目に治す、という目的で使います。
全体に塗りたい、あるいは、予防のために使いたい、という方には、保険は止めて、自費のケミカルピーリング(主に、サリチル酸マクロゴール)か、クリニック専用化粧品のうちの、ピーリング石けんなど、ニキビケア用化粧品の中から、その方の肌に合わせたモノを使ってもらってます)を勧めています。
その方が、副作用が少ないからです。
個人差はありますが、このディフェリンゲル、トレチノインとか、レチノール系と同じで、まず、赤むけするんですね。カサカサに乾燥して、人によったら、かなりヒリヒリします。日焼けした後みたいに、表面の皮がポロポロ向ける方もいます。まあ、当たり前と言えば当たり前の反応なんですが、副作用って、ヤツですね。ある程度効いてもらおうと思ったら、この副作用は我慢しないといけません。
そこまで代謝を良くしたら、さすがに毛穴も詰まらないし、皮脂も抑えられて、確かにニキビの方にはいいんです。
ディフェリンゲルが合わない方というのは、この副作用が我慢できない方です。
副作用の程度も人それぞれで、全体に塗っても軽めの方もいれば、少ししか塗っていないのに、結構ひどく出る方、ホントに色々です。
この副作用、ほとんどは2週間以内には出て来ます。それに対して、効果は、3か月かかると思っておくほうがいいんですね。ちょっとずつニキビは減って行きますが、副作用の強い方だと、劇的に効いているならまだしも、ゆっくりしか効果が出なかったら、誰だって、イヤになります。
ディフェリンを出す医師が、出す前に、ちゃんと乾燥や赤むけ・刺激感を伝えていればいいんですが、よそで出された大半の患者さんが、何も聞いていない、と言われます。
医師は説明したけど、患者さんが忘れたのか、ホントに説明されていないのかわかりませんが、「聞いていない」と答える方(初めてしりました、と)があまりに多いので、説明していない医師も多いんだろうな、と思います。
研究会とかでは、赤むけとかの話は必ず患者さんに説明して、保湿剤も出して、患者さんを励まして頑張って3カ月使わせましょう(薬を使ってほしいからではなく、治したいから)、みたいな説明がありますが、女心や思春期の心をわかってないな、と思います。
ただでさえ、ニキビを気にしているのに、そこにまた、顔中真っ赤っかになって、皮がめくれて来たら、誰だってイヤになります。(一時的には、元よりひどいこともあるかも)
そしたら、ディフェリンゲル止めとこう、となります。当然です。ガンバレ!と励ましたところで、その子は、そんな真っ赤な顔で、生活できないんです。
保険で使える薬の中で、なんとかしようとするから、必ず無理が出ます。元々保険で、キレイに治すとか、予防する、というのは、適応外ですから、そういうふうには、薬は作られていないんです。
バイキンを殺す、炎症(赤み)を抑える、というのが、保険薬の目的です。
ディフェリンゲルの3か月が目安、という話ですが、例えば、この3カ月我慢したら、何年もニキビから解放される、というのであれば、選択肢の一つですが、3か月我慢しても、しばらく使い続けましょう、となります。止めると、また、毛穴が詰まってくるからです。いつ止めればいいの?となります。いつまで我慢するの?。。。です。
自費で、サリチル酸マクロゴールピーリングをした場合、通常赤みは出ません。たま~に、他院でされた方で、、乾燥肌とかバリア機能が弱いのにして、赤みが出た、ということはあります。それでも、せいぜい数日~1週間でしょう。
適応のない方に、されていることもすごい多いです。
サリチル酸マクロゴールで、1週間も、赤みが出たら、その方にピーリングしたこと自体がおかしかった可能性もあります。ただ、反応させて、洗顔して洗い流してもらう時に、すごく擦って洗っちゃうと、赤むけする可能性はあります。これは、洗顔の仕方が根本的に間違っている場合です。
むちゃくちゃに擦って洗っている方、結構います。クセなので、中々治りません。こういう方は、ピーリングしちゃダメですけどね。薬の反応中は、赤みも刺激も何もなかったのに、洗顔後、真っ赤っかにヒリヒリし出す方が、たまにいらっしゃいます。擦っているんですね~。角質はほとんど無くなっていますから、それを擦ったら、エラいことになるでしょう。。。
その後、長めに冷やして、それでも炎症がひどければ、炎症を抑える薬を塗ったり、家でも塗ってもらうように、お渡ししています。
クリニックでするピーリングの場合、医師なり、看護師なりがチェックしています(していないクリニックもありますが)。するにしても、通常は月1回くらいですから、普段家で困ることは、ちゃんと正しくピーリングとスキンケアをされた場合、普通ないです。
うちでは、ピーリング後、半日は、ファンデーションはススメていませんが、日常生活に支障はほとんどありません。(予約されても、当日のお肌が乾燥していたり、適応がないと、ピーリングは中止します。いつ、誰でもやっていい、というものではありません。)
ところが、ディフェリンゲルや市販されているニキビ用の化粧品とかの場合、誰もチェックしていません。本人次第です。間違った使い方をしていても、次にクリニックに来るまで、あるいは本人から訴えがあるまでは、止められないんです。
先日も、ディフェリンゲルを目の周りに、1か月くらい塗っていて、乾燥ジワが増えた、という方がいらっしゃいました。
もちろん、ディフェリンゲルは、目の周りは塗ってはいけません。
患者さんによると、医師から、そういった説明はなかったそうです。
だからと言って、そんなきついのを目の周りに塗る?と思われるかもしれませんが、思い込んだ患者さんというのは、結構「えっ?!」ということをよくされます。かなりの人数の方が良くないことを平気でご自分の肌にされます。
(ご本人は、その時は、思い込んでいるので、何が正しいのか、もうわからなくなってます。また、それで良くなる、と思い込んでいるため、長く続けてしまいます。かなり、おかしくなって、アレっ?と気付かれるのが、早目だといいんですが。。。)
私は、使い方を間違えたら、エラいことになるような薬や化粧品を、患者さんに渡したくはないんですね。
元よりひどくなったら、治すのに大変です。
一時、プロアクティブのやりすぎで、アトピーみたいに真っ赤っかのガサガサのバリア機能が破壊されているのに、ニキビ相談、という若い方がすごく多かったです。
今は、だいぶ減ったし、そこまでひどいのを放置している方も減りました。
(普通は、ひどくなった時点で、止めるんですけどね。止めたら、またニキビがひどくなるんじゃないかと思って、恐くて止められないんです、特に若い子たちは。)
使い方を間違えなければ、結構いいモノも、とんでもないモノに変わってしまいます。
そういう可能性のあるモノは、自分で制御できない方(特に、若い子たち)に、持たせる、というのは、私は、止めてほしい派です。
ひどくなったら、元に戻すのに、お金も時間もよけいかかりますから。患者さんも大変です。
ひどいニキビならともかく、軽めのニキビ?みたいなモノでも、きつい治療(化粧品)を使って、かえって、悪化させて、というのもかなり多くて、そんな無理して、ピーリング系しなくても、と思います。
光・レーザー治療なら、ニキビ跡の治療も同時でに出来るから、軽めのニキビにはもってこいです。
ピーリングができない乾燥肌の方にも、肌荒れをしている方にも、特に、ジェネシスはバンバンあてていきます。お肌を元気に回復させながら、小さなトラブルを抑えてくれる感じです。イオン導入の追加をお勧めすることもあります。
(軽めの場合、ニキビではなく、毛穴の炎症で、ニキビというより、むしろ湿疹の薬のほうが効く場合や、乾燥して代謝が悪くなって、ブツブツが出てる、という場合もあるので、ニキビ=ピーリングではありません。)
自費で、サプリや塗り薬・クリニック用の化粧品を足したり、とその方がどこまでキレイになりたいのか、どこまで目指すのかでも変わりますが、予算の範囲の中で、いろいろ試されたら一番の美肌への近道です。
ニキビが治ったとしても、ニキビ跡がまだ残ってますから、キレイにニキビを治したい方・安全に日常生活に支障なく、ニキビの予防をされたい方は、保険だけでは無理だと私は思います。
そのために、美容皮膚科という、皮膚科とは別の科があるわけですから。
市販のモノでも、いろいろ試すこと自体は、ダメとは思いませんが、(試さないと、「効かない」、とか「やってはいけない」ということも、わかりませんもんね)必ず出所のわかっているモノを使いましょう。
(万が一の時に、ちゃんと文句を言える相手(会社)かどうか。用法用量も必ず守ること!)
それで、おかしいな、と思ったら、すぐにやめること。(お金がもったいない、とか、言っちゃいけません。合っていないモノを使い続けると、もっとお金のかかることになるだけです)
業者が、「好転反応」とかわけわからないことを言って、我慢して使ってください、と言われたら、すぐに皮膚科に行きましょう。
(ちなみに、「好転反応」なんて、医学用語はありません。エステや怪しい化粧品業界で、勝手に良いように聞こえるように、生み出した言葉です。皮膚科医から診れば、ただのかぶれです。そのまま使っていたら、とんでもないです。ただちに止めてください。)